坦懐
るるりら




ほいと 見知らぬ人から 
土のついた球根をもらった夜
その人の 笑顔が こだわりのなさが 
他人の私に わたされた 球根が
わたしの夜を あたためる

昼間と違い雨が降る秋の夜長は
すこしあたたかく こころが きもちより
さらに すこしのびて 球根に見惚れた

これをくれた お婆さんは
道で突然  わたしの服を褒め
おかえしにわたしは お婆さんのネックレスを褒め
そして ほいと 手渡されたのが 土のついた球根だった

明けた朝はしらじらと 霧の中
あの塊に 虚心坦懐となずけたら
内緒だけど わたしの こころは 貝の中の乙女

霧の中の朝は 貝の内側
わたしにかけられた 微粒子が ひかる
丹念にかさねならた 微粒子の中で
なんのこだわりもない おばあさんの手の皺を想う
年輪が わたしを えらんだのかな


としよりは すごい
あとがないから すごいのか
たいせつなもを なんのこだわりもなく
だれというわけでもなく さしだせる

そして
こだわってしまうわたしに 名づけられてしまう
これが 虚心坦懐だと


自由詩 坦懐 Copyright るるりら 2011-10-22 08:41:28
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