窓ふき
たもつ

 
 
窓ふきをしていたはずなのに 
気がつくと父の背中を流している 
こうしてもらうなんて何年ぶりだろう 
父が嬉しそうに言う 
十五年ぶりくらいじゃないかな
僕が答える
父の狭い背中から垢がポロポロと落ちる
お風呂、週一回じゃ駄目だよ
俺が風呂嫌いなの、知っているだろう
父の背中はどんどん薄くなっていく
透明になってしまうのではないか、
と心配になるくらいに
よし今度はおまえの番だ
そう言われて僕は後ろを向く
きれいに磨かれた窓ガラスには
僕の背中だけがうっすらと映り
外にあるのは寒い色をした空だろう
  
 


自由詩 窓ふき Copyright たもつ 2011-10-19 20:23:41
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