黙礼
木立 悟





海のなか
鉄の手は結びあい
夜を吹く森のそば
街に灯は無く
山は燃え



褪せた冬をゆく瞳
橋から橋へ雨は渡る
枝が照らす道を
海へ海へ下りる


嵐が野を水をすぎ
歌い出せない滴を残し
風を祓い
耳と羽を置き


冬が河口を見つめているまに
わたしは
わたしをあざむくわたしをあざむく
雨が水たまりとなる前に



夜は夜に傾いて
傾かない背はぬるりと語る
かつて三つの大陸の王にけだものはいたが
花と子を追い 帰らない
今も 今も 帰らない



霧に入り
再び出てゆく
青と白の門
すぎて すぎてゆく


二重 三重の虹を捨て
雨は雨に背を向ける
わずかな光さえ流す川
手のひらの夜を分けてゆく


道より高いものは皆うつむき
道がつづいてゆくのを見つめていた
水がはじまり 終わる場所の名を
静かに静かに忘れながら

























自由詩 黙礼 Copyright 木立 悟 2011-10-18 23:51:10
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