届けもの
つむ

昨日は小石を拾って歩き
そのいくつかを空き缶にしまい
いくつかで池の平和を乱し
残りにズボンのポケットをやぶられた

今朝は花を摘みとって歩き
少しを家の花瓶にさして
多くは風邪のあの子の家へ
差出人不明の玄関の花束

明日はこの手に水をすくいあげ
金魚の鉢へ
乾いた土へ
このくちびるへ
あさっての雨へ

いつか小石を拾うように
体をかがめて 罪を拾えたら
その全てをこの胸にしまって
やぶれることのない 強い鼓動で

いつか花を摘んだときのように
静かに咲いた心を見つけたら
全てを風邪の誰かの心へ
私は差出人でなくていい

いつか胸に壷をかかえて
幸せを入れる壷よりも
かなしみをすくう壷をかかえて
あなたの横に座っていられたら

水は花の飢えへ
小石は胸の窪みへ
そしてあなたの窓辺には花を
ひっそりと
ひっそりと


自由詩 届けもの Copyright つむ 2011-10-17 02:46:28
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