桃色の鞄
草野春心



  鮮やかな桃の色をした
  あなたの大切な鞄が
  線路の上にある
  今は秋の朝
  未だ人のまばらな
  プラットホームから眺めるとそれは
  轢かれるのを待っているように見える
  ピアノの低い音が
  顔色を窺うように割って入る
  今は
  秋の朝
  金木犀の香りが
  あなたをやさしく虐殺してゆく朝





自由詩 桃色の鞄 Copyright 草野春心 2011-10-16 19:11:33
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