ウミガラス
シリ・カゲル

今年になってやっと
我が家の底冷えのする土間に
ウミガラスが営巣した
すでに蓄えは底をついた
ぎりぎりのタイミング

かつては家族全員
障害者認定だったから
近所の一部マスコミからは
生活保護長者、だなんて
揶揄されたりしたものだったが

いまはただ、家族揃って
四方を障子に囲まれた部屋で
熱々のおでんを唇につける遊びをする
部屋の外からは、ただ
空気を濡らす羽繕いの音

ウミガラスのために子供たちが用意した
三和土のかき氷は
一度も嘴づけられることなく、溶けて
甘くて赤いだけのただの死海と化す

窓の外の隣家の緑のカーテン
ゴーヤーの実が熟れすぎてほぼ黄色いウミウシ

羽繕いが終わると
ウミガラスは今夜も土間土間でアルバイトをする
しばしば、
店長や同僚の目を盗んでは
おでんの種をちょろまかす


自由詩 ウミガラス Copyright シリ・カゲル 2011-10-16 15:53:24
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