夜と妄想
ゆべし



青白い少女の額に広がった砂漠を進む柔らかな月

青白い夜を踏みわけいつからか銀の鱗でエラ呼吸して

どぶ川の面(おもて)を撫でる聖母の手 草枕する我に眠りを

一人分の影は夜気に溶けそうで 背中の子どもまた重くなる

鋼鉄の雲を切り裂く誦経の音 爛れた月の光がしぶく

境界のブロックをゆく 肩越しにバイクが過ぎて圧されて揺れて

テールランプは血走っている 革ジャンの背に触れたい指は風に叩かれ




短歌 夜と妄想 Copyright ゆべし 2011-10-12 15:46:51
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