鈴の音
雪路
私は、暴漢の胸に
人一人殺すこと、容易い
恨みを込めに込めて磨いた
白銀の刃を、突き立てている
そして、見計らっていた時の訪れ
肋骨の狭間に、ナイフを埋め始めた
じわり、じわりと
その刹那、凛
私の高揚は、その音の合図とともに、離散した
すると暴漢、咄嗟刃を奪い
私の腹を貫いて、じつに無様な足取りで、逃げ去った
嗚呼、解らぬ
私の狂気は、鈴の音如きに攪乱されてしまったとでもいうのか
果たしてそんな馬鹿げた理由だけで
恐怖を凌駕すべき狂気は、打ち破られてしまったというのか
腹を劈く激痛は、まるで
考えるな、死を受け入れよ、と、ただ諭しているかのようだ
腹を押さえた掌が、非現実のような赤に染まっていた
嗚呼、後悔すべきことは
私が、人間として生まれてきたこと
せせら笑うように、凛
その音とともに
私は息を引き取った