夜と振子
木立 悟





手のひらや帽子に降りそそぐ
願われることのない星の色
杯ひとつに痛む片腕
夜を渡し 夜をこぼす


蛾と蝶のはざまの飾り
またたいてまたたいて夜となり
さらにまたたき
さらに夜となる


約束を果たせぬ詩人が
川を流れてゆく
同じく果たせぬ他のものたちが
岸に立ち 泡と光を見つめている


緑と灰の
はだしの径
こがねいろになぞる
親指の跡


夜の海を
霧が照らす
惑星だけが
打ち寄せる


現れないものと手をつなぎ
砂のかたちを歩いていた
遠く 早く 近く
岩が 岩でなくなるながさ


夜へむかうまなざしの端
壊れた火のようにうつむいて
渦と浪と
柱のはじまりを見つめる


雫に変わる音や色
くりかえすことなくくりかえし
径を曲がり
夜を曲がる


























自由詩 夜と振子 Copyright 木立 悟 2011-10-10 16:51:24
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