リンゴを買って
wako
闇と妄想は好相性
長い夜を
妄想が食いつくしていく
いく夜も
いく夜もかけて
食いつくして行く
そして
静寂が支配する夜に
妄想は確信へと変化する
白い小さな部屋では
よくある出来事
紅いリンゴを買った
甘酸っぱく香る大きなリンゴ
きっとおいしいに違いない
思わず笑みを浮かべて
我に返る
ドアを開けた瞬間に
異質の空気に飛びかかられた
引きずり込まれて
身動きできない
解き放たれた比重の重い言葉達は
床に澱んで満ちていき
ジワジワと
使いなれないナイフで
削る様にリンゴをむく
甘酸っぱい香りが充満していき
老いた母がつぶやく
「いつまでたっても不器用ね」と
大きな娘に
何がきっかけだったのか
きっかけなどなかったのか
それは理解のむこうがわの事
突然、言葉が荒れ狂い
つむじ風の様に舞い上がり
絡みつき
追いつめて
詰めよる
のしかかって
突き刺さる
「こんなリンゴは食べられない!」
正論など
何の防御にもなりはしない
首をすくめてやりすごす
夜も
闇も
いつかは友達になれるかも知れない