リンゴを買って
wako

闇と妄想は好相性
長い夜を
妄想が食いつくしていく
いく夜も
いく夜もかけて
食いつくして行く
そして
静寂が支配する夜に
妄想は確信へと変化する
白い小さな部屋では
よくある出来事

  紅いリンゴを買った
  甘酸っぱく香る大きなリンゴ
  きっとおいしいに違いない
  思わず笑みを浮かべて
  我に返る

ドアを開けた瞬間に
異質の空気に飛びかかられた
引きずり込まれて
身動きできない
解き放たれた比重の重い言葉達は
床に澱んで満ちていき
ジワジワと

  使いなれないナイフで
  削る様にリンゴをむく
  甘酸っぱい香りが充満していき
  老いた母がつぶやく
  「いつまでたっても不器用ね」と
  大きな娘に

何がきっかけだったのか
きっかけなどなかったのか
それは理解のむこうがわの事
突然、言葉が荒れ狂い
つむじ風の様に舞い上がり
絡みつき
追いつめて
詰めよる
のしかかって
突き刺さる

  「こんなリンゴは食べられない!」

正論など
何の防御にもなりはしない
首をすくめてやりすごす

夜も
闇も
いつかは友達になれるかも知れない


自由詩 リンゴを買って Copyright wako 2011-10-08 13:21:10
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