転校生
北大路京介
とある学校のとある教室に美少女転校生がやってくる。
ただ転校生がやってくるというだけでも一大事なのに、しかもその転校生が美少女とあって、クラスは転校生の話題で持ちきり。
とくに思春期の男子生徒たちは、まだ見ぬ美少女に胸ときめかせ浮き足立っている。
キーンコーンカーンコーン。
チャイムが鳴り、先生が転校生を連れて教室に入ってくる。
先生は、おはようと挨拶をして転校生を紹介した。
「転校生の桃井桜子さんだ。」
「はじめまして。桃井桜子です。仲良くしてください。」
桜子が深々とお辞儀するやいなや木下は彼女の手をひいて教室を出ようとした。
「まずワシと仲良うなろうやないか。さぁ、ふたりで保健室に行こ。やれ行こう。」
先生が木下の肩をガシっと掴んだ。
「連れてくな!」
その隙を突いて新條が木下と桜子の間に割り込む。
「Oh! My sweet angel 桜子さん! ぼくは新條光! ぼくの気持ちを受け取ってください! 」
新條は軽くウインクして、桜子に花束を渡した。
情熱の真っ赤な薔薇の花束。
「その花は、まさか!」
谷川の丸い顔が青くなった。
谷川が窓の外を見ると花壇の薔薇がなくなっている。
「ぼくの育てた花壇がー 薔薇たちがー。」
泣き崩れる谷川。
木下は火炎放射器を花壇に向けた。
「無残な姿になってしもうたのぉ。 いっそのこと焼き払ってしまえ。」
花壇は、木下に火炎放射を浴びせられ燃え上がる。
谷川は園芸委員で、その花壇に心血を注いでいたのだった。
「あははは。 燃ーえろよー。 燃えろーよ。」
泣き笑い、壊れていく谷川。
「やめい! お前が燃えてしまえ!」
先生が火炎放射で木下にツッコミを入れる。
焦げる木下。
先生は教室を見回した。
「さて、桃井の席は、どうしようかな〜。」
「ぼくの隣空いてます!」
新條が言うとおり、彼の隣の席には誰も座ってなかった。
木下は、自分の隣の席の男子を蹴り飛ばした。
「ワシの隣も空いてる!」
木下の強引な手法を見た男子生徒たちが、木下を真似て、ぼくの隣も俺の隣もと騒ぐ。
「では、公平にクジで決めよう!」
叫んだのは新條だった。
新條は易者のように割り箸の束を手にしている。
全部ハズレでアタリはない。
最後まで残った新條のクジがアタリとなるという寸法で、彼は内心「俺って、かしこーい」と笑っていた。
しかし、木下が
「よーし! じゃぁ、殺し合いじゃ! 桜子は、生き残ったやつのもんじゃ!」
と、叫ぶとすぐに新條の横っ腹あたりに牛刀包丁を突き刺した。
「ひええぇぇぇぇぇぇ!」
教室に男子女子の悲鳴が響き渡る。
「だれかー! 救急車をー!」
「保健の先生呼んできてー!」
騒然となった教室の中、桜子は気を失って倒れた。
桃井桜子は、それから姿を現さず、他の学校へ転校していきましたとさ。