【 トリコロール 】
泡沫恋歌
青
画用紙に青いインクを零したら
晴れやかな空になった
青いフェルトに涙を零したら
透明の染みになった
道端の石ころにも成れない私は
砕けた夢を抱いて歩いていく
笑えないジョークに顔が引きつって
沈黙することで自分を守っていた
もうあの空に鳩は飛ばない
濁った空の色 混迷の青
白
渇いた部屋には 白い壁とテーブル
褐色の珈琲に垂らしたミルクは
混ざり合わないまま渦を描いている
虚しく時を刻む時計の音が
私を寂しくさせるから
ねぇ なにか言ってよ!
貴方の笑顔も想い出せなくて
視界からフェード・アウトされていく
消えてしまえばいい 拒絶の白
赤
愛してると囁く貴方の声に
その頬を赤く染める
背後から抱きしめられて
高鳴るこの胸の鼓動
口移しで飲んだワインは
舌の先で媚薬に変わる
女は牝という獣になった
夜の闇を喰らう二匹の雌雄
貴方がこの身に注ぎ込んだ色
情欲の赤は 血よりに赫く赫く