黒髪

鰊が僕の腹を噛む
広い緑一色の海はその砂浜を濡らして星が流れ出す
灯台の岬に押し寄せるアザラシの群れ
低くうなりながら矢が飛んできて壁に付き立つ
それを放ったのは上空に浮かぶ龍だ
雲を呼び雨を降らせる
緑の海はうねりだし激しく打ち付ける
風が強いのだ
雷鳴の標的となった灯台がものも言わず鎮座すると
いつか星は雨に濡れて色を変える
激しさの天気龍はうねっている
鰊の群れが沖に黒くわだかまっている

灯台の中
僕はただ一人で時をコツコツと刻んでいる
鰊の古傷が痛み
羽根をそっと広げようとしている
おそるおそる
一人で地につながれた足かせを鍵空けて
同じ瞳の姿を映しながらただ前へ高いところへ景色の広がるところへ
白い羽と透き通る瞳の
一度思い浮かべた過去を忘れ去って
今と未来を想像するために
龍とアザラシの親子の見守るここで
渡っていく緑にくすんだ海を


自由詩Copyright 黒髪 2011-10-07 20:02:08
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