沈黙するお喋り
御笠川マコト

おや
朝の電車に 赤いランドセルふたり
姉妹かな,
ホームに残った母親に 手を振っている

柔らかな両手が動く
声にならない 唇の動きと一緒に
よどんだ空気を切りながら
僕には聞こえない「いってきます」
閉まるドアが
あちらとこちらに 温もりを分けた

あんたたちの
今日一日が 楽しけりゃいいと
ちょっと思うおじさんがいることに
気づくことなく
沈黙するお喋りが続いている

電車の振動に合わせるように
両手でよどんだ空気を
切りながら
沈黙するお喋りが続いている


自由詩 沈黙するお喋り Copyright 御笠川マコト 2011-10-06 23:30:44
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