無題
sham
どこかの飼い猫みたいな男が
知らんぷりして
去っていく。
「あの子が欲しい。」
いびつな骨がコートを着て、
耳に残る、首輪の鈴の音だけを追ってしまう。
これは、昔のはないちもんめの続き
自分の影だけが寄り添う夕暮れだったのに、
カラスがたくさんなくものだから、勘違いをした。
私は、ただの案山子だ
ただ、
出した手を誤っただけ。
山の向こうに沈むのを見た、
それは
煙草の火を消すときみたいな音を立てた。
きれいな思い出というやつだった。
私は消えていくそれを
立ちすくんで見ていた。
何も言うことなく
見ていた。
まけてくやしい、
とあのときは言えたのに。