無題
sham

どこかの飼い猫みたいな男が
知らんぷりして
去っていく。

                「あの子が欲しい。」

いびつな骨がコートを着て、
耳に残る、首輪の鈴の音だけを追ってしまう。

                 これは、昔のはないちもんめの続き

自分の影だけが寄り添う夕暮れだったのに、
カラスがたくさんなくものだから、勘違いをした。
私は、ただの案山子だ


                 ただ、
                 出した手を誤っただけ。
      

山の向こうに沈むのを見た、
それは
煙草の火を消すときみたいな音を立てた。
きれいな思い出というやつだった。

      
私は消えていくそれを
立ちすくんで見ていた。
何も言うことなく
見ていた。
                 まけてくやしい、
                 とあのときは言えたのに。
                 


自由詩 無題 Copyright sham 2011-10-06 22:35:07
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