宿命
吉岡ペペロ
そうやって大切な「もの」を失ってゆく
失ってゆくのはいつも「もの」だ
ぼくが「もの」にしてしまった「もの」なのだ
年甲斐もなくSMに溺れたのは
二十も離れた女と
ふたりだけの秘密をつくりたかったからだ
四五回ほどして女は体とこころのバランスを崩した
体とこころはちがうのだ
体は「もの」だ
こころは「もの」ではない
繰り返す失敗にぼくは宿命を思った
命という形をとって宿っているのは
孤独やそれに裏打ちされた冷たさだ
そいつが「もの」ではない「もの」を「もの」にしてしまう
・・・・・・・・・
そうやって大切な「もの」を失ってゆく
失ってゆくのはいつも「もの」だ
ぼくが「もの」にしてしまった「もの」なのだ