ラストアウェイ
つむ

ベンチに腰かけた迷子は
それでも平気な顔をして
赤と黄のうずまきキャンディをなめていた

古ぼけた観覧車が
いくつかの嗚咽を乗せてまわっていて
美しい馬たちはまばたきもせず
ただ同じ無言を駆けるだけ
歓声の合間に 油の切れた音がする

黙ってきいていると
静かなめまいが僕の上に降り
それは世界を大きくまわした

遊園地とは まわるものなのだ
赤と黄に
夜の街のように
あるいは終わらない無邪気な夢のように

まわりながら 擦り減るのだと
夢の錆び色をかんじながら額をおさえた
目がまわる、
軋む音がする

あたりを見渡せば木々の一本もなかった
暖かく七色に輝き廻る夢の国の上には
ただ冬枯れの白い空がひろがり
はぐれた鳥が
誰かを呼ぶ声だけが響いていた


自由詩 ラストアウェイ Copyright つむ 2011-10-05 22:17:11
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