ラストアウェイ
つむ
ベンチに腰かけた迷子は
それでも平気な顔をして
赤と黄のうずまきキャンディをなめていた
古ぼけた観覧車が
いくつかの嗚咽を乗せてまわっていて
美しい馬たちはまばたきもせず
ただ同じ無言を駆けるだけ
歓声の合間に 油の切れた音がする
黙ってきいていると
静かなめまいが僕の上に降り
それは世界を大きくまわした
遊園地とは まわるものなのだ
赤と黄に
夜の街のように
あるいは終わらない無邪気な夢のように
まわりながら 擦り減るのだと
夢の錆び色をかんじながら額をおさえた
目がまわる、
軋む音がする
あたりを見渡せば木々の一本もなかった
暖かく七色に輝き廻る夢の国の上には
ただ冬枯れの白い空がひろがり
はぐれた鳥が
誰かを呼ぶ声だけが響いていた