ひかりのかげ
草野春心
ほんの少しよごされた
ガラスでできたコップに
最初の朝陽がまっすぐに注ぐのを
僕はじっと見つめている
この朝はきみが目覚めた朝
洗剤の匂いが台所から
微風に運ばれて静かに香る
思いは胸の奥でさざなみをたてる
灰皿に吸殻がのこっている
テーブルに置かれた一冊の本は
未だかつて開かれたことも
閉ざされたこともないように見える
この朝は変わってゆく
服のように光を身につけ
影のように捨ててゆくから
この朝は失われてゆく
この朝はきみが目覚めた朝
微笑みながら窓をあけ
どこか遠くへ
いってしまったあとの朝