歌にならなかった詩
……とある蛙
「上を向いて歩く−はてどこかで聴いたような」
風は丘を越えて吹いている
丘を覆い尽くす向日葵は
風に吹かれていくらか首を傾げ
黄色い丸顔を撫ぜる風
道の下は荒れ地
昔昔その昔
そこは大きな畑だった
広大な綿花畑だった
向日葵の丘から見える山
その麓に町が出来た
その裏側に白い建物
金が出て仕事が出来て
クリーンな大きな公の仕事
そして今は誰もいない。
ネズミの死骸が数体
瓦礫の山
彼らの持ち物だ
彼らの土地を見下ろす丘に
向日葵の丘に僕は立つ
向日葵の丘に僕は立つ
向日葵の丘の上
ぽっかり浮かぶ白い雲
質感は豊かで 空の青は深い
上を見上げた僕の目には
雲の白、空の青は深い
向日葵の黄色、葉の緑
僕は上を向いて歩きだした。
白い雲の流れる方向に
僕は上を向いて歩きだした。
今度こそ騙されまいと
僕は上を向いて歩きだした
今度こそみんなの涙を見ないように
僕は上を向いて歩きだした。
自分自身の涙を見せないように
あの風が吹いてくる
希望の風が僕の顔を撫ぜ
また、僕は歩き出した。