夜へ 夜へ
木立 悟





塩の寺院を映す川
流れの外に冬は来て
人のものではない足跡を描く


常に 既に
先をゆくもの
黒と緑
終わる午後


坂の曲がり角をのぼる影
だが誰も のぼってはこない
山をまたぎ
何かが過ぎる


足下がゆがむ
しまい忘れたにおいがする
逆さまにたたまれた紙の曇から
水の粉が落ち 水紋は積もる


花の群れが文字に揺れ
やがて枯れては地に写る
雲間から
見つめる目


野の下の下
記号動力
巨大な洞にしがみつき
熱を吹き上げる


まぶたの内の灯
浮かずに浮き
触れることなく
街をなぞる


くぐる径 見えぬものを
あおぐ径
押しのけあう星の
何もないはざまが照らす径


野は息を切らし
稲妻のかたちに横たわり
水紋は倒れ 倒れつづけ
低く遠く 響きつづける


雨は刺さり
ぬるりと落ちる
花も声も傷に群がり
手のひらを上に重ねては
滴のなかの夜を見つめる


























自由詩 夜へ 夜へ Copyright 木立 悟 2011-10-02 21:53:56
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