はねのない蝶
ゆえづ
手紙をちぎってください
ひとつふたつ色づくまえに
すべてを忘れほどけたつぼみが
身をよじり花ひらく頃
すでにその使命を終えたわたしを
しっかりと見届けたなら
夢うつつのまに時は過ぎ
ありがとうと殺して
また忘れてゆく
ひとつふたつ笑って手折る徒花
まだ血はながれる
すっかり伸びた髪を
鏡の前でひとり結い上げて
誰かのために絹の下着をつけてみる
風邪をひいたのは
慣れないスカートを履いたためでした
蝶をつかんでしまったためでした
指にうつった鱗粉をうなじにすり込む
そんな日も悪くないさと
どこにでもある話