カワセミの標的
三条麗菜

ある時私は翼が傷つき
二度と飛べなくなってしまったが
水面に落ちたので死ぬことはなかった
でもその日から
私はカワセミの標的となってしまった

私を殺しに降下してくる
七色の体を持つ美しい鳥
襲われる度に私は必死で水中に潜り
どうにかその攻撃を避ける
そして私のすぐ上を虹が駆け抜けるのだ

ずっと潜ってはいられない
息苦しいのでいずれは再び
水面に浮き上がるしかない
それに何より
この水は傷にしみて
役に立たなくなった翼がひどく痛む

魚になりたいと願った
水中で自由でいられる魚に
鳥としての資格が失われたなら
せめて私を他の生物にしてほしい

しかしカワセミたちは上空から
神の言葉を私に浴びせてくる
資格は失われてはいない
命は等しく尊いもの
あらゆる形で生きる資格はある
あらゆる形で生きる資格はある
でもその目はギラギラと
水面の私を狙っている

ある日激しい夕立が降り
すぐに止んで太陽が出た
私は水面から
東の空にかかる大きな虹を見た
カワセミたちは再び
私に神の言葉を浴びせた
やがてはお前もあそこに行くことになる
我々の肉体となったお前は
我々と共に死んで
共にあの国へ行くのだ
天と地を永遠に回り
この世界を見守る
カワセミの魂の一部として

川はただ流れてゆく
終わりなく流れてゆく
傷ついた私を乗せた川
この流れには逆らえない
カワセミたちはひたすら
私を狙っている

認めない
私はまだそう呟いている


自由詩 カワセミの標的 Copyright 三条麗菜 2011-09-29 23:38:37
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