臓器のかなで
乾 加津也

肩上から指先にむかってながれる一本(くだ)を
ふき こすり たたけば
装置はあやしく
黄昏もする

段々畑にくみあがる椅子に 沈み
ホールそのもの

しずくのような響体構造が 浮く
口内に含み 移す されるわたしの
心拍いちども 増幅したがる単調は
もううんざりと言っている
なぜオーケストラ
目をふせて さそう かざす
てんたいかんそく


「気管をすっと刺しいれた
 處(いわ)」


 (大声で)外は激しいかあ

  (・・・わたしは 初めに いいたかった・・・)

 宵やみに 星
 明けの放佚 よろこび踊る川辺の小人の
 とめど わきでる処で

  (・・・わたしは 初めに いいたかった・・・)

 そうね
 けっして濡れないアルファベットがほしかったんだよね
 オー(くだ/かいてん/くだ/はんてん)を
 意志と
 こうかんに

  (・・・初め たかった・・・)


一瞬まえの鏡像を まねて
くだびとはひとり 立つ
ここでは
鯨が
プランクトンを丸呑みするほどに荘厳で
バイオマスは青く
波長は赤く
リズム(有史)は いくつもの息を 放り投げ
あなたもなんとこまやかな連打であわせ
か細く
長く
うたっていることか
プラネタリウムの
今にもただれおちそうな その
からだ(ひとつ)で


自由詩 臓器のかなで Copyright 乾 加津也 2011-09-29 17:51:31
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