夜のひと
そよ風

夜のひと
街角で下を向き、
誰だかわからないひとを待っている。

夜のひと
あなたはネオンを浴びてピンク色に輝く。

夜のひと
せめて今夜だけ
せめて今夜だけでもと
毎日のように。

夜のひと
その矛盾した心と体を悲しい悲しいと言わないで。

夜のひと
あなたはお母さんに似ている。大きなからだに精一杯の白い粉を叩いて真っ白な女に化けたあなたは、きっとあなたのお母さんに似ている。

夜のひと
私の中に忍び込みそっと影を落としていった。

夜のひと
朝が来たらすべてが消えるだろう。
偽りの顔。
偽りの体。
偽りの声。
偽りの性格。
偽りの過去。
毎日毎日つくっては消えていく。

夜のひと
わずかな真実でさえ、少しづつ削れている。

夜のひと
あなたに魔法の薬をあげるよ。
朝がくる前に飲めばいい。

夜のひと
夜なのに、どうしてあなたは影でいっぱいになる。


自由詩 夜のひと Copyright そよ風 2011-09-29 07:08:55
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