秋空に寄りかかる鱗雲が 開け放たれた海の際までずり落ちて きみが咳込みながらズボンを降ろすのを見ていた 秘め事はスライドガラスに貼り付けて 食べきったトマトの缶に詰めてある きみと 初めて手を繋いで眠った夜がカチャカチャ鳴って 顕微鏡を覗くわたしの目はきゅうと締まった どこからか なみだの玉が転げ落ち レンズの上でくるりと回って往生し すやすやと眠るわたしたちは 海の底 しあわせそうに ふやけていった