うつろ はばたき
木立 悟
ざわざわと息を噛むたび洞は鳴り洞のむこうの洞はこび来る
けだものをけだものと呼ぶ誕生日ただ生まれゆくただ落ちてゆく
ささやきが積もることなく降りつづくわかろうとする涙すりぬけ
羽と羽ふたつの羽のはざまから無数の洞の降りそそぎくる
文法が力の法である限りいつか廃れるその番人もまた
看守には自己と知識さえあればよい欲と振り仮名と法にまみれて
鋏から鋏こぼれし宴には止めの如き闇ひらめきぬ
さあみんな冷えた足を地につけてかがやく肩と聴こえぬ火の夜
戻らない時をときどき戻しては銀河の隣の銀河呼ばわる
あてもなく点滅する燈に照らされて名づけられた名を野に置いてゆく
はばたきとかがやき隔てる夜に立ち羽を忘れた羽ひらきゆく