やさしさの化学実験
つむ

微笑みの外骨格を
こじ開けて
嘘のガラス転移点を探り
じっと観察しながら
ビュレットから始める
とある愛の滴定

被験体は少し
怯えているようだ

手袋をはずして
華奢な頸椎をかぞえ
ふと笑みを洩らして
覗きこみ 撫でてやる
そら 君は泣き出した
きれいな涙のサンプルを得て
これよりカラムクロマトグラフィを
始める。

成分分析が終われば、もはや
残されたのは
強磁性のくちびるだけ
言葉は融点を迎え、
不純物を振り捨ててゆく
赤い赤い 酸化鉄の夜へ。


自由詩 やさしさの化学実験 Copyright つむ 2011-09-28 21:13:24
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