風見鶏
斎藤旧

しんしんと
たんぼに脳がふる
そそぎこまれた脳を
稲は根っこから吸い込んで
のびやかに育つ

私は脳をたべる
雪見大福と一緒に
稲穂の一粒が
まじったそれを

脳は何でも知っていた
パラベンの功績
あやとりの難しい技

風見鶏の項を開いて脳は俯いた
またまそこに何もなかった

脳は旅にでた
私を連れたままで
風見鶏を知ること
それが脳の使命になった

ながいながい電車の旅と
一眠りに合わせて
私はたどり着くのか
風見鶏の項にふさわしい何か

延々と続く道のりを
私は歩く
歩き続ける

小高い山の上で
私は額に手をかざす
風見鶏を探しに

一羽の風見鶏は
脳の気にそぐわなかった
錆び付いて動かなかった

もう一羽の風見鶏は
私の気に入らなかった
派手な色塗りがあって
ただの飾りのようだった

風見鶏はけたたましく鳴いた
ここにいる、ここにいる
しかしさみしいことに
脳に耳はなかった

私が聴くことしかできなかった時の声を
脳は電子回路にして聞き取った
脳は頷いた
これが風見鶏と

帰りの電車の中で
脳はうたた寝をした

夢をみる
風見鶏の夢


自由詩 風見鶏 Copyright 斎藤旧 2011-09-27 00:55:57
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