はごろも21
salco

二子玉ライズの空中歩道は
向かいの広大な更地へ伸びるらしいが
この世界不況下
行き先の着工が遅れに遅れて伸び悩み

曇天の早朝
工事途中の突端には
長い銀髪の天使がしゃがんでいる

見事なマッパに
スケッチャーズの白いローカット履いて
アルバイトの紘一が田山工業の8人乗りで
埼玉の草加から運ばれて来るのを待っている

それで、
床板を運んだり強化ガラスを担ぐ側を
気まぐれに飛んでは見せつけたり
不可思議な鼻唄なんかを歌ってやるのさ

色素が無いのは
天女だからアルビノで
虹彩も乳首もクリトリスもルビーみたいに紅い

それで、
昼飯時には吉野家なんかでメットを脱いだ紘一の
耳たぶや肩先を吸ったり噛んだりしている
 赤いだろ?

弱小サッカー部で補欠を通したやつなんか
何で見初めたのか知らないが
やつの方では触れたこともないのさ
半透明だからね

寒がりで雨の日は現われないし
晴れたら別の男の所にいるって話だよ
十九歳の紘一がこの先どこで働き
何になるのかはわからないが
当分、人間の彼女はできそうにないね


自由詩 はごろも21 Copyright salco 2011-09-26 21:43:34
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