世界観
D-drive

今朝は左足から玄関を出たので、帰りに雨が降ってしまった。

降り注ぐ水滴は国家予算を否決させ、太陽の寿命を2年縮めた。

おかげで地球裏の内紛はとりあえずの終結を見、駅前のパン屋は赤字になったらしい。

デジタル時計の数字が繰り上がると、スクランブル交差点では事故が起きた。

不可抗力の落雷は、台風3号を温帯低気圧へと変化させ、消えたネオンを目覚めさせる。

盛り上がった宴会が大統領の命を救い、結果ナイターは11回の延長を余儀なくされた。

タクシーのメーターは上がり続け、やがて身売りの女子高生は目を覚ます。

はっと見上げた満月が海面を少し引き上げて、核軍縮は2割がた進んだようだ。

紫陽花の花が幾つか散った影響で、楽しみにしていたゲームの発売が2ヶ月遅れる。

ナメクジを踏みそうになって足をどかすと、どうやら隣のご夫婦は仲直りをしていた。

その甲斐あってかどこぞの皇太子は挙式して、ブラックハーレムで年寄りが殺された。

水溜りのかさは思ったよりも多く、街灯の幾つかに虫がたかる。

ようやく大連立構想が纏まる所だったというのに、自販機でお釣りをこぼして全て台無し。

探し損ねた10円玉が、明日の日の出を3秒早めたから、緑化計画は難航する見込みだ。


スーツの濡れた部分が炎のような形。


ついさっき天文台では画期的な発見があり、夢破れた娼婦が人生を謳歌し始める頃、

不登校児童の幾人かは学校に行くことを決め、南極の融解に歯止めをかけた。

ひっそりと救われた海沿いの町が豊漁を祝い、煌々と光る海岸線は対岸の地には憧れを、
宇宙には好奇心を抱かせた。

大した熱意もなく送られたその光は首相のいびきで上手に届き、5万光年離れた星は、
近い将来第3惑星への遠征を決めることになる。


自由詩 世界観 Copyright D-drive 2011-09-26 07:47:31
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