私は、ただ、苦しむ人として、そこにいた
一 二

生まれて初めて
合コンというものに行った

どうやら
男が童貞であるか、そうでないかは
話の内容や、話し方ではなく
第一印象でわかるらしい

居酒屋の座敷で俺はまるで
金魚鉢に入れられたエサのように
流れに流されるまま
漂い
食べ残され
ただ、底に沈んでいった

イケメンの友達に誘われて行ったんだから
一つぐらいおこぼれにありつけるだろうと思ったのが
甘かった

酒も飲めず
女の子と喋れない俺は
ひたすら隅っこで
「時計仕掛けのオレンジ」のアレックスが
ドラッグ入りのミルク酒を飲むように
ひたすらカルピスを飲んでいた

熊本市の学生は二つのパターンに分けることができる
上通りや下通りに居場所があって
背筋をしゃんとして歩くことが出来て
楽しく過ごせるかどうかだ
そうできないと青春をしくじってしまうことになってしまう


「(俺の名前)はバイトだけん、二次会こられんやろ?」
その友達が気を利かせて
そう言ってくれた
打ち合わせもなく突拍子も無く
いきなりだ
モテる男は気が利く
俺が帰りたくてしょうがないが
逃げてしまってはみっともない
ということを感づいていたのだ
俺の女っ気の無さをどうにかするため誘ってくれたのに…

イケメンの友達だから
女の子は例にも漏れず
俺をイケメンだと思っていたらしく
少し遅れて入ってきた俺を見て
葬式のような雰囲気になったのは
言うまでもない


緊張して飯が入らなかっため
馴染みの定食屋でうどんを食べる

なんで俺は
一度きりの人生に
今しかない青春に
こんな惨めな思いをするのだろうと思った

ただ女の子の友達がいて
楽しくお喋りしながら食事をする
という当たり前のことが
何故こうも上手くいかないのだろうかと
惨めでしょうがなく
なにより親に申し訳なかった

女の子の友達を作るのは来世で頑張ろう
何故だか、重力すらも煩わしい


自由詩 私は、ただ、苦しむ人として、そこにいた Copyright 一 二 2011-09-26 02:54:34
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