時の砂丘
月乃助


時の器に
夜がすこしづつ満たされていく

眠りついた月の横顔

埋もれた砂時計の砂丘は、はだしのぬくもり
天よりふる砂を見つめては
閉塞されたガラスにふれる



砂の音はやまず
一筋の銀の糸が悲しみの砂山をきずく



あしもとのどこかから
笑い声/泣き声がする
聞きなれた 父の
小さな妹の
老いた母の
亡くなったものたちのたちの声


わたしは心のうちに 死が終焉であると
悲しいものだと 決めてしまっていたのです


いいえ

死とは、
死んだものたちとの あらたな関係性の始まりに
すぎない


死んだものたちは
生きているもののうちに
永遠の命をやどしているではないですか



指のあいだをすべり落ちる 
砂のぬくもりを確かめ
わたしは、死を埋葬し
時の砂丘に墓標をたてる


それが唯一の答えであるかのように



月明かりに
どの砂の一粒も光をはなちはじめ
時の堆積は今宵
やさしい香りをわたしに
もたらした










自由詩 時の砂丘 Copyright 月乃助 2011-09-25 14:08:28
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