ふんわりとした接点
nonya


たった1年で
大人になった猫は

春には泡立つ光の匂いを
丹念に嗅ぎ回りながら
ひとつ歳をとり

夏には風呂場のタイルの上に
長々と寝そべりながら
ひとつ歳をとり

秋にはふっくらとした腹を
丁寧に毛づくろいしながら
ひとつ歳をとり

冬には誰かの膝の上で
遠慮なく丸まりながら
ひとつ歳をとる

猫の平均寿命は
飼猫で12〜13歳
野良猫で6〜7歳

人の時間に当てはめれば
ずいぶん短い一生だけど

もともと猫は
当てはめられることが嫌いで
そもそも猫は
時間なんて面倒臭いものを
持ち合わせていないし

ゆらゆらと蛇行する人の時間を
ひょいひょいと掻い潜りながら
ただ真っ直ぐに生きる

ときおり人は
人の時間からむんずと腕を伸ばして
猫じゃらしを揺らしたり
三角耳の後ろを掻いたりするけれど
猫の真っ直ぐな生き様は
そんなことでは曲がらない

それでも人は
人の時間をぐんにゃりと曲げて
猫撫で声で勝手な名前を呼びたがる
傷だらけで猫可愛がりしたがる

ふらふらと蛇行する人の時間に
温かくて毛むくじゃらの
ふんわりとした接点を結びたがる




自由詩 ふんわりとした接点 Copyright nonya 2011-09-24 19:51:39
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