時間旅行
umineko
全部全部ネットの上にあるなんて思うのは大間違いだ
本当に伝えたいことはこんな画面の中にはないのだ
夕暮れの空の色がグラディエーションで変わっていく美しさを
言葉で表現することはどだい無理なのだ
私は
不可能を可能にしたいと思っているわけではなく
何かを成し遂げたいという強い野望を持っているわけでもない
グラディエーションで変わっていく空のありさまを
たとえばそれを誰かと見上げたことなどを
水まきするホースの向こう側に虹を見たことなどを
それは私の角度しか見えない
それを誰かと共有もできない
屈折率の違いから水滴のアールを入射角として
自然光が多色光として分離される
それよりも
夏の匂いが
そらいっぱいの水滴で冷やされていくその有様を
誰とも共有できない
そうだ
それはたぶん私だけの
グラディエーション
暮れてゆく空の哀しみを私はいつかあなたのそばで
哀しみも寂しさもひとりぼっちで
だけど
時間は正直に流れていくよ
あなたと
私が
隠している心のひだをひとつひとつ重ね塗りして
同じ空を同じ角度
同じ意味で分け合えるなら
そこまで
私はゆっくり歩いていこう