だんごむしのロンド
つむ



地面がないときは歩かない
そう決めてたっていうのに
地面がない
地面がない
地面がない
ぼくはこわくて ひたはしる

足がないときは歩けない
そう思ってたっていうのに
足がない
足がない
足がない
まぼろしの足と 地面がこすれて
ぼくののどを歌がさかのぼる。

そのうち 世界はさかさまになる
ぼくは地面で足をかけ
歌のなかをぼくののどが滑る
景色がぼくのめだまを見つめ
大気が触角を感じ取る

地面がない
足がない
ぼくはいない
世界もない
なのに
こすれあう音だけが
どこか広く美しい暗い場所に響いている
ぼくはこわくなくなる
声を立てずに泣く
安らぐ
夜が僕の中で ねむる。





だんごむしなので
丸くなることがあります
だんごむしなので
黒い節々であります
だんごむしなので
二本の触覚を持ちます
だんごむしなので
歩くも走るも変わらない
だんごむしなので
ただ無知をゆきます
だんごむしなので
天より地が近い
だんごむしなので
いつかは白く朽ちます
だんごむしなので
悪しからず
だんごむしなので
ご了承下さい





だんごむしですが
愛することは覚えようと思います
だんごむしなので
時間はあまりない
だんごむしなので
声は立てません
だんごむしなので
聴こうと望むこころしか持ちえない
だんごむしなので
聴くことは叶わないのだと
だんごむしながら
知っているのです





美しいと思うとき
だんごむしは腹を見せ
しかし地球はこの回転する大宇宙の
ほんのはじの灰色の雲を抜け
突風をかすめ黒い地面へ衝突し
その上に 無様にころがる
だんごむしなので
だんごむしなので
望みえないと しっている
聴けないことも知らないよりは
聴けないことは知っていて
聴けないだけの 我が身と共に
音なき日々を転がろう
初夏の残光は世界を濡らし
春の凍土は冬より寒く
ちらつく雪は星より熱く
死骸を埋めるにふさわしい
聴けない罪を負ったまま
無音のかなたへ 朽ちてゆこう


自由詩 だんごむしのロンド Copyright つむ 2011-09-22 16:07:23
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