やくそく
高梁サトル
「鳥が空で迷子にならないのはなぜ?」
幼い目で僕を見上げた
その髪を撫でながら
「くだらない考え事をしないからだよ」
と呟いた
美しいものは特に
何も持たずに輝いている
昨日つらいことがあったんだってね
悲しいときは悲しいうたを歌えばいい
我慢なんてせずにさ
取り乱してもいいんだよ
お皿なんて何枚割っても買ってあげるから
恥ずかしがらずに
あるがままにしてていいんだよ
きみが好きだよ
愛しくてたまらない
僕は何もかもが下手だけど
きみが間違えたからって見捨てたりしない
それだけは守る自信があるから
怖がらずに思いっきり泣いていいんだよ
胸の中が空っぽになるまで
明日の足取りが軽くなるように
泣き止んだら
あの頃のように顔を上げてごらん
そして思い出して
生きることに精一杯になってしまう前の
まっさらだった頃
みんな同じだったろ
隣の子と自分を比べることがあったかい
きみはきみのままで満たされていたはずなんだ
どんなきみも最高さ
どんなきみも愛してる
僕たちはずいぶん歳が離れていて
きみの赤ちゃんの頃をよく覚えてるよ
僕の指を握り返した小さな手のことも覚えてる
言葉を覚えて初めて喧嘩した日のことも
もちろん
パパが亡くなったあの日のこともさ
隠れて泣いてたきみに
掛ける言葉を思いつかなかったことも
きみは強くなったね
いろんなルールに忠実に正しく生きてきた
だけど僕の前では間違えていいんだよ
格好つけて痩せ我慢して
僕みたいになるくらいなら
その方が何倍も賢いんだ
ひとりで巧く歌えないうたなら一緒に歌うから
たくさんいろんなうたを歌おう
そうすればもっと世界は輝く
きみならできる
傍にいるよ
パパみたいにいきなりいなくなったりしないから
やくそくだよ
やくそくだ