自虐のひと
恋月 ぴの

か弱いものでも生きてゆける
それが人間らしさってこと

それなのに時には誰かを押しのけては前に進み出て

この一歩が生死を分けるのよね
なんて言い訳をする




世の中は悲しみのうえに成り立っていて
この瞬間にも誰かが泣いている

それでも流した涙ほどに報われることは無く

母を亡くしてはじめて気付くのは

若かりし頃のやさしさとか
ふと胸に抱いてくれたぬくもりの安らかさとか

そんなものだったりする




悲しみはひとの目を曇らせるのか
出てくることばは嘆きばかり

気分転換と秋のはじめに散策でもすれば

目の前の景色に何故か見覚えがあって
それは母の描いた風景画のなかの色合いだった




若すぎる死ではあったけれど
亡くなるべくして亡くなってしまったのは確かなようで

遺品整理と称しながら投げ捨てたもの

母が集めた土鈴の数々
老人会の輪投げに興じる母の笑顔




自由詩 自虐のひと Copyright 恋月 ぴの 2011-09-19 18:30:35縦
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