秋の心
花キリン

人の死が一層悲しくなる季節がやってきた
他人には聴こえない声が生まれてくる
とすれば 私は私の記憶に疑心を残したまま
季節を飛び越えなくてはならない

夏が終わって秋が始まるという一小節は
季節の螺旋階段を下りていく蟻達によって
運ばれてくるのだろうか
想像が膨らむとその枝先もまた疑心へと向かい始める

人の死が一層悲しくなってくる
感傷にも色があることを意識し始めると
訃報は新聞紙に包まれて
黒い色付けをされてから突然やって来る

少し疲れた雲がすっと降りて来て
誘うように絵の具の心を騒がせる
空に描くものはまだ決まっていないが
絵筆は疑心から離れて幾つかの色を選び始めている


自由詩 秋の心 Copyright 花キリン 2011-09-19 08:12:52
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