ロックンロール・キングダム
竜門勇気

君を僕の部屋に入れてあげる
小さなドアですけど
秘密の合図がないとあかない
中指なんかたてたってだめだよ
メロイックサイン?
お隣へどうぞ
短パンの奴と暴れといで

部屋の中はすごく狭くて
一人だけしか入れないから
孤独だけは覚悟してね
何をしてもいいけど
何もしなかったら溶かされちゃうから注意して
どんなにいいことしても
褒めてはもらえないし
悪いことしてたら
突然システムエラーで死んだりするけど
かっこよければ誰かから評価されるから安心して
ぱっとみた感じそれっぽければ
君は王国の一員になれるよ
夢見てたような世界じゃないけど
誰かに望まれる誕生じゃないけど
本物でも偽物でもない生き方だけど
秘密の合図さえ思い出せれば
それっぽいまがい物として
子供ぐらいならだませるから安心して

君を僕の部屋に招待してるんだ

だってのに君はWikipediaに夢中で
通り過ぎて
新しくて良くできた扉を開けて
開けたくせにしばらく中を眺めただけで
綺麗なハンガーだとか
くたびれ具合が最高にイカしてる壊れたテレビだとか
ポケットに入れていい気になってる
こいつらがロックなのかい?
誰もだませない詐欺師の末路だよ
"円ではない球も存在する"
こんな言葉もそこにはあったのに

僕の王国へようこそ
秘密の合図を思い出したら
いつでもおいで
僕はもうどうしようもなく遠くへ
それを置いていってしまったので
ただドアの前でたばこをふかしてるだけさ
中は寒くてひどい風が吹いてるから
一番暖かいセーターを着ておいでよ
家具はないけどナイフはあるから
なにも心配しなくていいよ


自由詩 ロックンロール・キングダム Copyright 竜門勇気 2011-09-17 12:49:25
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