挽歌
つむ
やがて
色彩の和声も荼毘(だび)に伏されよう
弔鐘すでに熔けおち
あるいは
ふるびた博物館で骨組みをさらす古代魚
の、夢にすぎぬかもしれない夜の訪れ
時の基底膜を無音が
うち鳴らす。
闇の紗の透きとおる地層と
月の鱗粉と花々の咆哮の共鳴
に抱かれ
追憶から滴るとうめいな毒液で
あなたを希釈する
こよい
夜露に背をぬらして
星の撒かれた天を仰ぐ。
おとなしく展翅された魂の海図
容れる為でない冷たいうつろ
それらが
わたしを淋しい標本にする
老朽の速度をのがれ
はるか肉と光の訣別のかなたへ
連れてゆきたかったのだ、
あなたを。
もはや 喧騒はすぐそこだ
肺胞に澄んだ劇薬をみたし
枯れ果てた秋の真昼
にも似た明るい死顔で
笑わねばならぬ、
声をたてて
木製の楽器のごとく。
しばし
わたしは歌をやめよう、けれど
いつか晩春の風にさらわれ
恍惚として枝を手放した日には
あなたの名で
喉を焼いても良いだろうか
にび色に重く光る午睡の果て
から覚めたばかりの幼子のように。