ぱや虫
藤鈴呼

* そよ風が 頬とカーテン 撫でて行く

夜になると 気温もグッと下がって
汗だくだった身体も 
少しダケ 涼を 取り戻すけれど
ピタッと張り付いた シャツは 脱げない

サラっとした 素肌に 憧れるけど
梅雨から夏にかけては 望めない
いえ 私は 汗っかきだから
もしかしたら 年中 サラッと生きることは
難しいのかも 知れないな

そよそよと吹く様子から 
そよ風と呼ばれるのかは
良く分からない 
想像でしか 無いのだけれど

どっちにしても 風の姿は 見えないから
想像するしか 無いのですね

明かりに群れる ぱや虫が 嫌で
「ぱやむしって なぁに?」

台所や 街灯を好む ちっちゃい虫が
ぱやぱやずいから そう呼ぶんだって

母が あいつらのこと そう呼んでたって
彼女が 笑いながら 言うもんだから
すっかり 気に入っちゃって
私も 最近 使っているの

そんな パヤ虫から 逃れる為に
部屋を 密閉して 
時節柄 洗濯物の目の前で 

乾燥機 代わりに 
除湿機を 常時ONにすれば
蒸れること 請け合い

群れるのも 蒸れるのも 勘弁ですと
透明な ガラスの向こうを 見やる

涼しそうな 月明かりに 嫉妬して
少し 手を伸ばす

やっぱり 空気が 必要なんです
何だって 密度が 高すぎたら 苦しいでしょう 

部屋に換気をさせる為 を 言い訳に
窓を そっと開けてみる
カーテンは 閉めたまま
網戸も きっちり 閉めたまま

空気の転がる穴が 嬉しそうに 歪む

見えぬ そよ風は
夏の日差しの下でなくても 
感じられると 知ったのです

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自由詩 ぱや虫 Copyright 藤鈴呼 2011-09-15 11:52:51
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