ノウゼンカズラ
花キリン

               
                  
まき水をしてみる
夕立を誘うように

蜃気楼の先から
風鈴電車が走り抜けてくる
虹の橋がゆっくりと空へと伸びていく

暑い日には
童話の中の物語が懐かしく思い出される

この塀を乗り越えると
戦時中の荒廃した時代に戻れるというのだが
蔦や花びらが巻きついた平和な時間から
遠ざかる覚悟が必要だ

生きることで精一杯だった青春時代
背伸びしても届かない先には命の迷いがあって
夢などみる時間はなかった

大胆に冒険してみようかと
いまの時代は平和だから
躊躇するものが希薄になっているのかも知れない

塀の中から押しとどめるようにして
無数の神の手が伸びてくる
蝉が鳴くこの平和だけは守らなければならない

ノウゼンカズラの枝先が天上へと伸びていく
真夏日に行水している子供たちは
まぎれもなく天使だ



自由詩 ノウゼンカズラ Copyright 花キリン 2011-09-14 06:15:53
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