無限回廊
橘あまね

鏡を見つめるわたしの目の中に、
鏡を見つめるわたしの目が映る。
(ひとみの中で、鏡像が無限に連鎖する。)

鏡の回廊、光線の無限反復。
鏡の回廊、すべてのものを閉じ込める。

瞳のなかで光線の、
幾億回ものかなしい往復。

回廊は確かに見えるのに、
わたしの身体は見当たらない。
探したけれどどこにもいない。
どこにも映らない。
なぜだろう?

(ただわたしのひとみに、
わたしのひとみの
鏡像が映るその連続。)

(わたしの身体はその反復にたえられず、
きっと有機酸の分子の
ひとつひとつまでに分かれて
回廊いっぱいに散らばったのだろう。)

瞳の中に鏡の回廊、無限の回廊。

そのはてしない連続は、
まるでゆく当てのない
死者たちの行進。

そのむなしい反復は、
まるで犀の河原の
千年の孤独。

いつか崩れる回廊の、
今はかなしい無限反復。
わたしの身体はその日まで、
見つけられぬまま朽ち果てる。


自由詩 無限回廊 Copyright 橘あまね 2011-09-13 22:54:49
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