時をきざむもの
橘あまね
くろく、くろく、くらい空。
雨の音がきこえる。
天井のうえ、
雨の音がきこえる。
空と屋根との多重唱。
埃積もった机のうえの、
十年遅れの怠惰な時計。
秒針だけが独りできざむ、
十年遅れの虚しい時間。
わたしの終末にむけて、
KLOCK・KLOCK・KLACK、
KLOCK・KLOCK・KLACK。
やがて秒針が力尽きると
雨がかわりに時間をきざむ。
黒く黒く暗く雨粒は落ちる。
くろく、くろく、くらい空から。
雨がやみ、
自分の鼓動の音だけがきこえると、
わたしはモノクロの陰惨な空を見上げ、
わたしの終末が、
また少しだけ近づいたのを知る。