さなぎのはら
つむ

さなぎの原はそらの土地
とうめいな樹木のつづらおり
千丈の根にうおの骨、
絡まるたおやかなうおの骨。
おまえを祝ってしんだのです。

さなぎの原は海のそら
わたる針金の雁の群れ
うすみどりの雲の白い血と
やさしい氷柱のにがいあじ
おまえを祈っておちたのです。

さなぎの原をゆくものは
歩き歩いて胸にだく
やわらかな繭に発電し
耐えかねたような唇に
沈黙の歌をのぼらせて。

あらゆるものに名を呼ばれ
呼ばれて歩くさなぎはら
いまだ芽吹かぬ星々に
おまえが歌っている限り
世界もおまえを捨てはしない。

海の半ばのくらがりで
おまえの血だけがあかるいときに
砕けた鏡を踏んでゆけ
さなぎの原はこわれた旅路
おまえの後ろで朽ちてゆく。

ただ祝福と祈る声
ただ呼び声と泣き声と
おまえの歌の交わりに
座標をえらぶさなぎはら
ゆめなわすれそ、旅人よ。


自由詩 さなぎのはら Copyright つむ 2011-09-12 18:37:05
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