菜の花畑
橘あまね

菜の花畑
咲きさかり
やまぶき色とみどり色
そよ風と土のかおり
織りあわされる

やわらかな茎の
なかほどで
てんとう虫は
僅かのあいだ
同朋の仔を
確かに見守る

てんとう虫
おまえをそっと
ひとさし指に
まねき移すと

おまえの六本の肢
指先から手の甲へ
手の甲から指先へ
おまえのかすかな
重みを感じる。
(生命のきざむリズム。)

おまえはわたしの指先で
四枚の翅
ゆっくりとひろげて
すこしだけ
風向きをたしかめて
西のほうへと
ひそやかに風に乗る。
(ああ、旅立ちだ。新生だ。)

咲きさかる
菜の花畑
振りかえり
振りかえり
ひとりごと
ぽつりぽつり
(求めるものはそばにある)
(探し求めたりしなければ)

そう、
真昼の天球に
プレアデスの
乙女たちを
さがしつづける
そんな徒労にも
いつかは終わりが
くるのだと

菜の花畑は
うしろのほうで
微かなこえで
わたしに告げる。


自由詩 菜の花畑 Copyright 橘あまね 2011-09-11 23:08:58
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