九月階段
塔野夏子
夏が去ったあとのがらんどうに
いつしか白く大きな九月階段が出現していて
そして僕らはその段々の上に
蒔かれたように腰かけていた
ただそこで空を見あげていたり
何かを読んでいたり
歌をうたっていたり
うとうとまどろんでいたり
時々 自分のいる段から
何段かあがってみたり
何段かおりてみたりして
そこに腰かけなおしてみる
あるいは 誰かの隣に行って
しばらく話をしたりもする
何をしていても
どの段にいても
僕らみんな うっすらとしたとまどいを
意識のおもてに貼りつけたままで
何をしていても
どの段にいても
たぶん心の底で言葉なく祈りながら
神と名づけることもできない
何かに向かって