九月階段
塔野夏子

夏が去ったあとのがらんどうに
いつしか白く大きな九月階段が出現していて
そして僕らはその段々の上に
蒔かれたように腰かけていた
ただそこで空を見あげていたり
何かを読んでいたり
歌をうたっていたり
うとうとまどろんでいたり

時々 自分のいる段から
何段かあがってみたり
何段かおりてみたりして
そこに腰かけなおしてみる
あるいは 誰かの隣に行って
しばらく話をしたりもする

何をしていても
どの段にいても
僕らみんな うっすらとしたとまどいを
意識のおもてに貼りつけたままで

何をしていても
どの段にいても
たぶん心の底で言葉なく祈りながら
神と名づけることもできない
何かに向かって





自由詩 九月階段 Copyright 塔野夏子 2011-09-11 12:19:20
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