秋の夜はいつわりを許さない
橘あまね

ぼく、
透明な夜をみあげます
半透明のたましいを宿して
伸びていく木になります

ほしかったものが、なかなか
みたされないから
ほしくないって嘘をつく
あんなもの、いらない
あんなもの、いらない、
もうなんにもいらない、いらない、
後ろ暗いあたりにひびくともなく
ひびいて、ひびわれて

かすれてしまった
夜がひろがって
ぼくをのみこんで
肌を乾かしていく
ふれあうことなしに
色を塗っていく

ほしい、ほしいよ、って
まだ蝉がないてる
いちばん遅くに生まれたから
いちばん強くほしがってる
手に入るとか入らないとか
きっとそんなこと思わずに
ほしがってる

神さまとか女神さまとか
ねえ、この世界を見ていますか
半月がもうしずんで
夜がとても深いです
ぼくに、ふれてくれますか
あたためてくれますか

秋のはじまりの風は
水晶みたいにきれいだけれど
ぼくを切り開いていきます
痛みがあります

透明な夜に
ぼく、半透明のたましいを
さらけだせるかな
遠い日まで届くように
伸びていけるかな


自由詩 秋の夜はいつわりを許さない Copyright 橘あまね 2011-09-10 10:51:17
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