言葉をめぐる熱狂 第三楽章
佐々木青

  するどく、狂おしく


 燃えるものはなんでも燃やせ
 沈むものはなんでも沈めろ
 飛び立つものはどこでも飛び立て
 足があるならひたすら走れ
 腕があるなら意地でも掴め
 頭があるなら煮るなり焼くなり考えろ
 口があるなら果てまでしゃべれ
 言葉があるならただじっと黙ってろ

壮大なうわごとが大地からこだましてくる
地響きとなって
人間たちをおびやかす
崩れていくのは高いビルだけか
埋もれていくのは生活だけか
「ああ、さびれていく風景!」

      (愛している 愛していない)

   キワモノどもが夢の跡

 とうに過ぎた絶対の秋 もう秋! もう冬!

欠如した睡眠能力が朝を迎えるまでこの夢から帰してくれない
夜は粘ついた手で全身を撫で回していく
見ろ
ベットのランプに群がる闇ども
あれが夜の正体で
あれが僕らの言葉だ
知られていないが
あれが言葉の姿だ
僕らの夢を食い散らし
〈夢〉そのものに成り果てようとする
だから僕らは夢を覚えていない
あいつらがみんな食ってしまったからだ
夢を思い出す
夢を語る
夢を綴る
「もうあなたなしじゃ生きられない!」

詩人も歌手も小説家も
果ては異国の魔術師までも、
最後にはあなたを愛するしかなった

あなたの手に接吻をさせてください

願わくばあなたの血肉をお分けください と

   完


自由詩 言葉をめぐる熱狂 第三楽章 Copyright 佐々木青 2011-09-08 05:03:08
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